
数々あるスペイキャストの専門用語の中に 「 F L I C K 」 という言葉が存在する。直訳では、“ パチンと弾く ” とか “ 軽く ピシッと 打つ ” そんな意味があるらしいが、スペイの世界では “ シュート時に手首を利かした ( スナップ ) キャスト ” となり、要するに手首の回転をも利してシュートをする事で、これは回転運動を主とするゴルフや野球等では常套手段となっているのだが、直線運動が重視されるフライフィッシングに措いては手首を固定してキャストするのが原則とされ、これは特殊技術とも考えられる。
実はこの技、先日に紹介した ピーター・アンダーソン氏等もこれを積極的に活用している様子が窺え、先の練習時に左からのキャストで試していたが、結果は散々たるものだった。
何故良くなかったのか、後から考えれば簡単な事で、スナップを利かすとは手首を回転させる事と直結し、手首を回転させた瞬間からロッドは回転運動となって丸く幅広なループを生み出す事になるので、極端に回転させると逆効果と成り兼ねない。回転という考え方よりは、剣道の面打ちの如く一瞬僅かに動かし直ぐ戻す位の正に “ 弾 く ” 位の感覚でいいのだろう。

ここでふと気になって、この手首の動きは自分自身、今迄一体どうなっているのだろうかという疑問が湧き出て、過去の映像を片っ端から見返していると、固定しているつもりだった手首もダブルハンドロッドの反発を支えきれる訳もなく回転しているらしいという疑念が湧いた。
では、それでも何故細く尖ったループが生まれたのだろうか。
ここでもう一度 ピーター・アンダーソン氏等のキャスト映像を見返していると、小さい動きながらもスナップを利かせてシュートした瞬間は僅かに腕を突き上げている。これはロッドの先を点としての動きとして極端に置き換えて見ると、回転する動きと同時に直線的に動かす事で、その一点の軌道としては直線に近いものとなるといった推測が出来る。

つまりは手首が回転しながらも腕を斜め上に突き出す事によって直線状の動きに変えているのではないかといった事である。
よって、自身右からのキャストでは知らず知らずの内にこれを実践していたのではないか、といった感じだが、これら全ては飽く迄も推測に過ぎないので、これから検証して見たいと思っている。
更に逆を言えば、固定させたつもりの手首も実は知らず知らずの内に回転している可能性があるので、それを相殺するには真っ直ぐと前に突き出すのみでは不完全で斜め上に突き上げる必要があるとも考えられる。
即ちシュートの際、手の動きとしては、
真っ直ぐと真正面に突き出しただけでは円運動を消す事が出来ない。よって斜め上へと突き上げる様な動作が必要となり、真っ直ぐに腕を突き出しているつもりでも力の無い丸いループで飛んで行ったラインが見えた時は更に上へ腕を突き出す事で解消される可能性がある。