またも増水。高水位が長らく続いたまま梅雨入りを迎えた何時もの本流は週末を過ぎると雨が降り、再び濁流に飲み込まれた。これは釣りとして絶望的状況であるのはインターネットの水位記録からも容易に判断がつくと、前日あれこれと行き場を迷うも、いい加減に最も気になる場所へ行きたい、そして最も行いたい釣りが三週連続して出来ないのは憤懣やり切れない。こんな考えから先日は無駄を承知で何時もの本流へ向う事にした。
丁度いい機会であると午前に私用を済ませ正午を向える少し前に到着した何時もの本流は、既に油菜は枯れ、伸びた葦が群生する夏の様相へと移り変わっていた。
草叢が垂れ下がり行く手を拒み始める河川敷を進むと誰も居ない奥の車置き場へと辿り着く。河原の狭く一層遠退いた対岸には稚鮎釣り数名が見えるも、こちら側にはルアー釣りが一人居るだけではあったが、こんな状況にも係わらず未だルアーを投げる者が居るのであれば、状況が再び好転すると沢山のルアーが交錯する混雑した水辺へ戻るのか。
雨続きから気温の低い日が続いた関東も、この日ばかりは梅雨の晴れ間が広がり気温が29℃にまで上昇するとの予報からゴアテックスのウェーダーを選び、一切の河原が失われた本流へと浸って行くと普段は平らに思えた箇所は窪んでいたらしく予想以上に深く斜面直下からの水深は一気に腰にまで達すると16度の水温も思いのほか冷たく、額の汗も一気に引き一転して身体が冷える。
当初、濁りは予想された程ではなかったが、上流で何らかの変化があったのか直ぐに水田状の色へと変わった。これでは釣りとして益々無駄な抵抗で半ば練習を兼ねてはいるものの、出来る限りの最善策は講じようとタイプⅡの本体部にタイプⅣのティップを繋ぐ。
本来ならば更に沈めたい所ではあっても、平水から1m以上も水位が上昇している状況で釣りをするとは全く考えが無く、何処にどういった障害箇所があったのかを把握しておらず無難な選択に留めた。
一体何故こんな無駄な事をするのか。そうか、練習だったな。こうした自問自答を繰り返してはキャストを続けるも、実はただログネスの感触を味わいたいだけだったのか。
この所、ここ右岸から左の抜上式でキャストする際は全長9mのヘッドであったが、今回は10mヘッドによる左のキャストを練習していると毎度恒例とも言える厄介な下流からの風が強まり始め、釣りという行為自体すら殊更困難にさせる。
こうして濁流と化した無の本流へ向い、ただ無駄と思えるキャストを只管繰り返してはいたが、やはり左のキャスト、そして逆風にも負けない術を今後の課題と見出し、この日が終った。