台風4号と共にやって来た低気圧。既にこれは五月中旬の恒例行事となり、何時もの本流は大増水すると、奥日光、二荒山の麓に位置する中禅寺湖へと向った。
ここへやって来たのも一年振り、本格的な釣りとしては昨年に引き続き3度目の訪問。今回は午前五時の到着と過去最も早く辿り着いたものの、人気のある通称 “ 国道側 ” と呼ばれる方面には平日にも係わらず既に沢山の釣り人がひしめき合って空きが無い。後に現地で出会った釣り人に聞くと夜明け前には “ 場所取り ” が始まり、中には深夜から湖畔に寝袋を持ち込む猛者まで登場していると聞くから、恐れ入る。いや、少々呆れていた。
それにしても凄い人出だ。道端の駐車スペースは何処も車が溢れ、木立の向こうには釣り人が等間隔に並んでいるのが見え、稀にこの間隔が開いている箇所があり、その場に入ろうかと近寄って行くと単に釣りを休んでいるらしく大荷物だけは残してある。つまりは “ 場所取り ” だけは絶対に欠かさないといった状況で、これらを行っているのは略フライ派の釣り師と思われた。
また、今回はダブルハンド・ロッドの使用者が更に増えフライ全体の4割近くには達しているといった印象があった。
ある意味これはスペイが “ 湖派 ” にも深く浸透し始めている証拠でもあり、過去、魚を散らす等とオーバーヘッド派より白い目で見られて来たという話を考えると喜ばしく、また変人がこの地へとやって来る切っ掛けにもなってはいるが、見ている限り、例の前方に三日月を描いて水面を切り裂く “ 戸澤式三日月投法 ” の動作を、どう見ても只の練習をしている程度としか見えない人も多く、ここではオーバーヘッドキャストが上手な人が多いだけ余計に目立ってしまう。
確かにこれは、明らかな迷惑行為とは言い切れないだろうが、寄りによって最盛期の混雑する一級釣り場の一角を練習で占有している結果にもなり、迷惑と感じている釣人も少なくは無いだろう。
よって一年の3分の2を練習に費やしている変人としても湖のキャストとなると一年振り、使用するロッドも一年振りでは直ぐ隣に不快感を与える恐れが高く、少し間隔が広めに見える場所へ何とか入れて貰う事も考えたが、止む無く意中の “ 丸山地区 ” はウロウロしながらも断念し、更に奥へと進むと一気に釣り人の姿が絶えたのが“ 金谷ワンド ” と呼ばれる地区だった。
それにしても、ここまで人出の明暗がはっきりと分かれているには、恐らく国道側唯一の大きい湾内が本鱒の回遊経路から外れる地帯なのかといった想像が簡単に付くも誰も居ないひっそりとした山上湖がここにだけ存在し、実に魅力的に見えるとやっと釣りを始める事になった。