“ 無 ” から生み出された抜上式の弊害。ここから、先日の練習では一旦基本へ返り、抜上式というキャストを一から見直していた。
最初に抜き上げてからラインを置く位置。ペリーポークや昨今シューティング・スペイと呼ばれているキャストでは概ね13m程の長いシューティングヘッドを使用し、ロール・アップする体制からラインを折り畳むゆえ、その位置は自ずと決まって来ると思われる。
だが、こと10mヘッドを使った場合の抜上式に措いて流水で膝下の立ち込み程度ではロール・アップもせず楽々とヘッドを引き抜いてしまい、慣れない内は中々この位置が定まらない。勿論この位置は何処でもいい訳も無く適度な位置がある。
そして、この位置は非常に重要で次に来るヘッドの折り畳み箇所と直結し、その位置はヘッド先端凡そ1/3から1/2で折り畳む事が出来る位置、シングスペイで言えば、アンカーを打つ位置となる。
次に確認するのが、鍵を握ると見られたヘッドの折り畳み。今これは様々な方法があるのだが、飽く迄も我流という立場から見ると、これらには共通している事が一つだけあった。ずばりそれはヘッドを畳み終えた状態のロッド角度にある。
当初の抜上式では、このロッド角度を然程倒さずに凡そ30度付近迄で終えていたのだが、やがて登場したシューティング・スペイと呼ばれる方法を真似、大きく水面付近までロッドを倒したりもしていたのだが、実はこれが悪い要因を招いていたと結論付られた。
それは以下の解釈に基づく。
シューティング・スペイ、ペリーポークこれらのキャストではランニングラインとのオーバーハングは1m程、これに対し抜上式を始めとする 「 飛 翠 」 では、尋常ではないとも思える凡そ3mを標準としている。
1mのオーバーハングからヘッド全体を着水させるには、ロッドを水面付近まで倒す必要があるが、これを3mもある状態で行ってしまうと、そのオーバーハング部分が大きく弛み、この状態からスイープするとヘッドが暴れ気味でロンチポジションのDループが不安定になる。
よって、この弛みを防ぐには、更に先へとヘッドを送り出す必要があり、そこからスイープしてしまうと本来のアンカー位置が後退しすっぽ抜けが起こる。この辺りは飽く迄も憶測の域に過ぎないが、ざっとこんな図式が思い浮かぶ。
こうした事から、ラインを抜き上げた後は、ロッドを従来通り30~40度の角度に留め極普通に折り畳みスイープしてキャストすると以前の感覚でキャストする事が出来た。やっと従前の状態に戻った。
自身、抜上式とペリーポークはオーバーハングの長さが違うだけで、後は全く同じ動作でキャストしても何ら支障が無いと間違った解釈をしていたが、実はそうではなかった事が今回の一件で解った。
そうか、たったこれだけの事だったのかと喜び、久し振りに充実感を味わっていたが、1週間後にも同じ事が出来るのかという不安感から、この感覚を二度と忘れない様にと繰り返しキャストしながら、ラインが折り畳まれた時の形状を何度も確認していた。それは縦に細長く、左右が反転した “ C ” の様な波紋が夕刻の水面に浮んでいた。
しかし、後日になって映像を見ていると、更に重大な発見をする事になったのだが、この時点では勿論知る由も無い。