間も無く3月を迎えようとしているが、温か過ぎる冬のせいか今年は珍しく釣りがしたくなっていた。別に魚が釣れなくてもいいので、ただそれなりの場所に毛鉤を流しあの独特の情緒に浸るだけで良かった。
こうして昨日の練習は数ヶ月ぶりにあの本流に行っていた。荒涼として殺風景な関東平野のど真ん中をゆったりと流れる本流。まだ早いこの時期にここへ来る人も少なくひっそりとしているが一体何の工事だろうか、遥か対岸では3~4台の重機と大型ダンプカー忙しなく行き来して微かな騒音が鳴り響いている。
時刻は午前10時少し前、気温8℃、風はほぼ無風だった。暫く手にしていなかった12.6ftのロッドを取り出し、毛鉤は何でもいいとドロッパーに#8、リードフライに#10のウェットフライを結び付ける。
渇水し切っているとは言え関東を代表する本流の一つ、ずっと練習していた川とは違い流れには活力があり生命観に満ち溢れている。久し振りに釣りの雰囲気を味わうには充分だった。
水温8℃、日差しもあるので寒くはなかったが、分厚いネオプレーンのウェーダーでこうした流れに腰まで立ち込むのも久し振りなので、恐る恐る川の奥へと立ち入って行く。
こちら側は右岸になり、左の反転式の練習にもぴったりだが、このキャストは練習していないにも係わらず10mのスカンジナビアンSTヘッドは快適にキャストが出来た。
但し、インターミディエイトのシンクティップでも根掛かりが多いのが少々厄介なのだが、今この渇水時期に川底の状態や地形、流れの筋等を歩き回って確認しておく意味合いもあるので致し方ない。
川の中央付近にまで差し掛かった。以前に対岸の左岸からは来た事があったが、こちら側をじっくりと歩き回った事は無かったので色々と解った。あの辺りには大きな岩があって水深はこの位。ここの落ち込みは深くなっているが底は砂が堆積している。流れの本筋はこことあそこを通ってあの辺りで合流している等の岸から見た大凡の予想だけではない川の真実が確認出来た。
こうして擬似的な釣りであっても、釣りをしていると時間はあっという間に過ぎて行くもので、気が付くと午後1時を過ぎていた。