この頃のスペイキャストはフライフィッシング界に随分と普及し、友人達もシングルハンド・ロッドでちょっとした打ち返しを練習する様になった。シングルハンド・ロッドでは手首の負担も大きく、ダブルハンドの様な遠投の期待は持てないが、比較的小規模な川で背後の障害物を気にする事も無くウェットフライを素早く打ち返しての遡行が可能となり、実に効率もいいし気持ちのいい釣りが可能となる。
だが、こうしたちょっとしたスペイであってもやはり最初にどうして陥るのが 「 ブラッディー・L 」 という現象だ。
Bloody ・ L 。この現象を最初にこう呼んだのは確か サイモン ・ ゴースワース氏で、直訳すると 「 酷いL型 」 とかそんな感じになるのだろうが、要するにリフトしたラインをスイープしてアンカーを入れる瞬間に、ラインがグシャと折れ曲がって着水した状態の事で、理想的な着水は飛行機の着陸の如く端から綺麗にそして静かに接するのがいい。
これは短いラインで行うペリーポ-ク系のキャストに措いては、一度の着水からアンカーを入れ直すので然程気にしないでいいが、あまりにも酷い場合にはラインが絡み合う原因にもなるので出来れば避けておきたい。
この現象が発生するのは、リフトが早い又は不完全、或いはスイープする際に急加速が主な要因となっているのだと思われ、これを解消するにはリフトとスイープをゆっくりと行うのが良いとされる。
更にリフトした際、ラインの先端部を少し水面に接した状態 ( これをイアン・ゴードン氏は “ First Anchor Position ” と呼んでいる。) を残したまま、ややゆっくりと急な加減速をさせる事無くスイープすると上手く行く。
また、ここで注意したいのはリフトからスイープ、ロンチポジションそしてシュートといった動作は滑らかに、それぞれ一連の動作としてきっちりと行い、ペリ-ポークの様に途中で動きを停止させるという事はない。
中でも特に陥り易いのが、リフトしながらスイープを開始してしまう事だ。リフトが不完全だと着水しているラインは表面張力によって長くベッタリと張り付いているので、これをスイープで引き剥がそうとするとラインに無理な力が働いて姿勢を乱してしまう。イアン・ゴードン氏曰く、リフトは上に向ってゆっくりと行うとCND社のDVDでは解説している。
これはヘッド ( ベリー ) が長いライン程難しくなり、25mもあるロングベリーと呼ばれる長いスペイラインを遥か下流から綺麗な姿勢を保ったまま抜き上げるのは一見簡単な様で相当の技術を必要とし、これを弾き返してシュートするのは究極の技とも言える。
これに比べ、高々13m程度のラインでこれを行うのはそう難しい事では無いと思われるので、後はアンカーを上手く入れる事が出来ればちょっとしたスペイキャストは完成したのも同然だろう。
撮影 : bestcast.exblog.jp you氏