今冬の豪雪も何のその、結局雪代の終焉時期はほぼ例年通りだった。それにこの地方はまだ雨が少ないのかも知れない、今度は水不足にでもならなければいいのだが・・・。
この本流にこんなにも減水した流れに浸かるのは初めてだった。対岸も随分と近くなった。水温は12.5℃だったが、水質もやや淀んだ様に感じられる、これからは更に減水するのだろう。
暫くすっかりと魅力の失った流れに毛鉤を流していると次第に雨粒に強く叩かれるようになって来た。やれやれ、この空ならばまだ大丈夫だと思っていたが、強風に運ばれて来たのだろうか、ひとまず退散しよう。
葦原を藪こぎして車へ戻り、昼食を摂っていると風と共に、雨脚も更に強くなっていた。もう一度、朝の場所へ舞い戻った方が得策かも知れない。握り飯を食べ終え煙草を吹かす頃には、こんな結論に達していた。
またしても大胆な行動が裏目に出てしまったかと、後悔しならが国道をインターチェンジに向って走らせていると雨が止んで風も弱くなって来た。「 あれ、もしかすると・・・。」 既に低気圧が遠ざかったのかも知れない、そんな思いが頭を過って一旦、側道に折れ、またしても迷っていた。
暫く天候の様子を伺うと、元来た道を逆走していた。まったく何をウロウロしているのだろうか、これで今度、天候が再度悪化したら本当に諦めだと硬く決心して、次の場所を目指すことにしてその場所を検討していた。
この水量からすると川幅が狭められた場所がいいであろうという結論に至る。しかし、この辺りは地形的にそういった所が無い。何処かにそんな所はないだろうか・・・。「 いや、あの辺りに一箇所あった。」
以前、まだ雪代が多い時に訪れて殆ど手も足も出せない状態の場所だ、この水位ならばいいかも知れない。国道を一気に下り、更に都会化した景色を通り過ぎるとその地に到着した。しかし、またも風が強くなっている、もうどうでもいい諦めだと自らに言い聞かせて水辺へと向った。
藪こぎして現れた流れは、ほぼ予想通りの水位になっている。向こう側から迫り出した山筋が川を狭めて、流速を早くすると先程の場所からすると同じ川であるとは思えない水の色をしていた。まだ、こんなに透明度が高かったのか、これならば期待出来るかも知れない。
但し問題がある。川幅を圧縮しているという事は当然、後方の空間が無い。この場所、オーバーヘッドキャストでは岸と平行に投げるしかないので、ほぼ完全に封じ込められてしまう。更にこの風で安全に釣りをするには 飛 翠 でさえやや後方空間を必要とする 反転式 のキャストになってしまう。直ぐ後ろに迫った、ざわついた草むらを振り返って見る。何とかなるだろうか・・・。
続 く。