梅雨前線から発達した低気圧は朝から生暖かい風を生み出し、生育した木立を揺らしている。これから訪れる台風の様な嵐の前奏曲だろうか、新緑の木の葉がザワザワと音を立てている。これで等々4週連続の強風に晒される事になった、自分は雨男ならぬ、“風 男”なのだろうか。
それは昨日の午前7時、今年になってやっと自分が最も知り尽くして本流へと到着した時の事だった。
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今年は雪代の終息時期が遅れて待ちに待った、自分の庭と言ってもいい位に毎年通い続けている本流で釣りが出来る水位に近づいていたが、例年よりも未だに30cm位水位が高いのが気になっていた。果たしてどうなのだろうか・・・。
先週に久しぶりのシングルハンドロッドでの釣りが心地良かったが、この地は午後からは向かい風が強くなる、おまけに今日は既に4~5mの風速がありそうだ。この為、高が山女魚狙いにしては明らかに力を持て余してしまうのだが、この風に対抗するのとオーバーヘッドキャストが出来ない場所であるが為に、6番のダブルハンドロッドを用意した。
先ずは、この水位によって発生する手前側の緩い流れに用いるスペイラインを準備し、核心部用にはシューティングヘッドを巻いたリールをベストに仕舞い込んだ。
土手を登ると予想通り、直ぐ下には流れが生じ、磨り減ったネオプレーンのウェーダーでは意外と押しが強い。それを渡り身の丈程に伸びた草木を掻き分けてやっとその姿を露にした。
やや上流に位置するこの辺りの地形ではまだ凄い流れをしている、早速、水温を計測すると未だに8.5℃しかない、例年ならば11℃位はある筈だ、一抹の不安が頭を過る。
手前の流れ、予測した通りいい流れを形成している、ここからスペイキャストで探っていくのだが、至近距離にも係わらず下流からの風によって押し戻され気味だ、無理にラインを伸ばす事は無意味だろう。
いつもならばもっと上から探っていくのだが、この水温では期待できないであろうと中程から毛鉤を流して行くにも中々アタリがない、小さい魚位は反応しても良さそうだが、やはりダメなのだろうかと思い始めて居た時、「 ゴン、ゴン。」 という振動がロッドから伝わった次の瞬間、毛鉤のある地点に水飛沫が上がった。しかしロッドには何の感触も無い。フッキングしなかったのだ。
それなりの山女魚だっただろう少し残念な気持ちもしたのだが、やはりここには居るといった安堵感が勝っていた。これならば核心部は期待できるかも知れない。
だが、そうなるとここの流れも最後まで毛鉤を流して見たくなって来る、更に流れの緩くなる下流へと探っていくのだったが、その後は全くの無反応だった。あの剛流に向かう前にここで 飛翠 の準備をするべく、スペイラインを巻き取り、ベストからタイプⅢの9mのシューティングヘッドを巻いたリールをロッドに取り付けていた。さて、これからが本番だ。
続 く。