対岸へぶつかった流れは反転してチャラ瀬を形成し、今度はこちら側にもう一度怪しき流れを醸し出していた。
浅いチャラ瀬ではあったのだが、ヌルヌルとした川底に足を取られそうになりながら辿り着く。先程までの右岸から今度は左岸に上陸し、落ち込みの辺りから徐々にラインを伸ばしていく。ここも同じく流芯が対岸よりにある、おまけに緩やかなカケアガリで足場も良い、ここも毛鉤を流すのに適してはいる。そして如何にも釣れそうなのだが・・・。
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ラインがある程度の長さまで出ると右腕からのスネークロールキャストにより流れに対して垂直気味に探っていた。上流から風がキャストとラインの着水姿勢を手助けしてくれている、実に心地のいい釣りは成立している。
この場の中ほどに達した頃だったろうか、キャストしてから暫くスィングに移行した時に 「 グン、グン。」 という振動がロッドから伝わって来た。しかしこれも針掛かりには至らない、その上やはり小さい魚だ。この後は結局ここでも何も釣れないまま終了し、遅い昼食を採ることにした。
こうして午前中に小さい魚でもいいから何尾か釣っておこう。といった甘い考えは無残にも打ち砕かれた。
毎度、コンビニエンス・ストアで買っておいた握り飯を食べながらこの後の事を考えていた。遥々ここまでやって来た、このまま上流よりで小魚でも釣るか、それとも予定通り一気に下流へ移動して博打釣りでもやるか、この場合、今日は一尾も釣れない事は覚悟しておかなければならない。
さて、どうするか・・・・。
少し迷ったがやはり下流の巨大な流れに身を委ねて見たかった。問題はこの風、下流へ行けば更に強くなるのは十分予想がつく、それでもいい、やはり行こう下流へ。
国道へ出て下流へと車を走らせる。町並みは更に近代化してここが越後である事を一瞬忘れる。大手家電量販店や牛丼のチェーン店が新たに出店されていた。大雪だけを克服できればこの辺りで暮らすのも悪くは無いかも知れない。そうすればちょくちょくここで釣りが出来る。それならきっと・・・・等と現実離れした妄想をしながら目的地付近に近づいた。
ここを曲がるのだったな。国道から離れて長閑な町並みを抜けると田園地帯の遥か先に橋が見える、あれだ。
近代的な現代風の住居と懐かしき日本建築の民家が混在している。
やや東よりから吹いている風、これなら右岸ならばやや背後からの風にして、利き腕を上でのキャストが出来ると予想して目指す橋を渡る。下流域、最初の目的地に近づいていく。そこは以前に小さいながらも虹鱒が遊んでくれた所で水深があり、いい流れをしている。
が、何やら工事をしている。しかし河原には軽トラックが乗り込んで何かの網を仕掛けている、ウグイ漁だろうか、ならば大丈夫なのだろうと土手を降りて行くと一般車両立ち入り禁止と表示されている。
仕方がない左腕を上にしてのキャストでは不利となるが、再度、橋を渡ったすぐ対岸に良さそうな場所が見える、あそこに行くとするか。
ここは初めて釣りをする地点だ。浅そうに見えるのだが、この辺りの巨大な流れは左右の土手にぶつかっては反転する。といった蛇行を繰り返して意外と深くなっていたりする。果たしてどんな川底なのだろうか、底石はどんな具合だろうか。とりあえず向かって見ることにした。
一年ぶりに持ち出したのはKⅡの13ft、ミディアム・スローだが、バット側はとても力強い竿でこの飛翠にも十分使える。しかし、懸念した通り、風の強さが更に倍増している。空もぼんやりとした雲に覆われて来た、通常こうした曇り空では風が弱くなって来るものなのだが、不思議な気象状況だ。
そそくさと葦原を掻き分けて広大な河原を横切る、コチドリだろうか警戒音を発している。彼らも子育ての真最中なのだろう。小砂利の水辺から足元に注意して、ゆっくりと立ち込んで行く、遠浅だ。更に立ち込んで一応、ラインを伸ばして暫く探って見るが、やはりどこまでも浅く、底石も小さい。おまけに平らな地形で底に変化が感じられない。
暫し迷う、ここはダメだ、移動しよう。
更 に 続 く。