エゾハルゼミとキビタキの合唱を聞きながら昼食を採っているといよいよ風の強さが本格的になって来た。これは非常に厳しい。取り敢えず場所移動するべく車を走らせる。昨年良かった場所に行っても良かったが、今回はその更に下流に興味が湧いてあちらこちらを見て廻る。こうした行為も実はとても好きであり、釣りには必要な事だと思っている。何せ誰かに教えて貰った場所とか釣り場の案内本などに掲載された所とかは殆ど当てにしない。自分の目で見て確認しないと納得がいかない性分だから。
------→
どの位移動したかは定かではないが毎年ここへ来る度にもっと下流、いやここ全ての流域を見てみたいとずっと思っていた。橋を渡って土手沿いを走る。行く手を伸び放題の雑草に阻まれる。そして暫くして土手沿いを走る。そんな事を繰り返していく途中、一筋の流れに見入った。
ここだ。
見るからに釣れそう。
そこは河原の半分程に十字形のコンクリ-トブロックを埋め込んでいる。コンクリートがまだ新しく見えることから工事が完了して1年も経過していないだろう。その上には同じ物がもう一つ、今度は反対側から埋め込まれている。一体何の為に・・・。
勝手に推測すれば河川保護の為ではないだろうか。この辺りは鮎釣りで有名な場所でシーズン中ともなれば沢山の鮎釣り師が各地から詰め掛ける。これらの釣り人はこの地の大切な観光客として、多大な資金を齎す。恐らく年々と小砂利によって埋め尽くされる川では放流された鮎も定着せず成育もしない。これらに危機感を覚えた行政が動いたのではないだろうか。
こうした人工プールは本来の姿ではないが止むを得ない。だが、たったこれだけではその効果はいつまで保たれるだろうか。
上にもう一つあった。
しかし、正直これは有り難い。そしてここならば魚は居る筈、このプールならば釣れるだろうという期待感が持てるのだが、問題はこの風、更に強くなった様な気がした。
今度は左岸から、上の落ち込み付近から探って行く。下流から吹き上げる強風によってランニングラインが体に纏わり付いて絡み付く。苛立ちながらも何とかキャストして馴染ませながら流す、誘いながらラインを回収する。同じ事を繰り返している。今にもあの衝撃波が伝わってくるのではないかとゾクゾクしているのだが、いつになっても何の感触がない。何が悪いのだろう。
ふと気になって水温を再度計測して見ると12.5℃にまで達していた。毎年の記録では朝方と日中では2℃ほど上昇していたがずっと下流に移動したとはいえ4℃以上も上昇するのだろうか。更に釣りを続けながら水温計を水に浸して置くがやはり同じだった。これは一体何なのだろう。
それは兎も角、この水温ならば渓魚の活性は良くなっている筈なのだが、例え釣れなくとも何らかの反応くらいあってもいいのだったが、等々何も無いまま末端まで来てしまった。
下流は更に魚が少ないのだろうか。そんな思いも過ったのだが、更にこの下流は一体どんな様子なのだろう。それにこの先は川が大きく湾曲している。もしかしたら少しは風裏になるかも知れない。そして以前から見ておきたい場所が沢山あった。そうするとこの後は殆ど釣りをせずに一日が終わってしまうかも知れない。
どうするか迷っていた。
続 く。