猛烈な風によって荒涼とした眺めを助長させていた先日の利根ではあった一方、毎年の4月中旬が過ぎると俄かに慌ただしくなる場所が大堰下流の群馬側で、ここに広がる砂礫の浅瀬で激しく水飛沫を上げるマルタの産卵行動が盛んに繰り返されると、利根にも訪れた本格的な春を感じるが、50cmを超える魚が関東でも手軽に釣れるとあって、この魚の隠れたファンは意外と多いと見えて、この日も一台の車に便乗した4人ほどの若者を喜ばせた。(笑)
斯くして、暴風の吹き荒れる利根での釣りを可能とさせたキャストもペリーポークを基礎に持つ抜上式はヘッドの全体を空中からスィープさせた結果、ヘッドの先端が旗の如くバタバタと靡いてしまいアンカー打ちすらも儘ならない他の手法とは違い、ヘッドを水面と接触させた安定した状態からのスィープによってキャストへと導けるとあって、個人的にはペリーポークこそが最強のキャストでもあると言えるから、何時如何なる状況に直面しようとルアー等にも一切頼らず、飽く迄もフライフィッシング一本で釣りを通すにはペリーポークを左右両側からのキャストを身に付ける必要があるが、ペリーポークは急流の上流側にヘッドを配置させる場面に弱いと言う欠点もある為、最低でも左右で4つキャストを求められる。
また、幾ら風に強いペリーポーク系の抜上式ではあっても、ヘッドをダンプさせる際にはヘッドをシュート方向に折り曲げて配置させる必要があり、この時に上流寄りから強風に吹かれてしまうとヘッドは風に煽られ川と並行した格好で着水し、実に都合が悪く、こうした状況はダブルスペイに適するが、ダブルスペイは凡そ90度の角度変換を伴うキャストであるから、シュート後のヘッドも流れを直角近くで遮断する様な状態で着水して、これも都合が悪く、もう一つのスナップ・Tもヘッドを跳ね上げた時点から強い風に煽られてしまう。
そこで、当時は流れから引き抜いた途端、風に煽られ先端が下流に向いてしまうヘッドはそのまま一旦、ダブルスペイと同じ体勢から着水させた後、ここから同じ手順でヘッドを切り返した後にダンプしてシュートすると言った手順に最後は落ち着いていたが、この時は既に吸水し柔らくなっていたランニング・ラインが切り返す際に流れの中に生じた弛み等によって絡む場合も多々あって、結局は厄介な釣りである事実も全く変わりはない。(笑)