郷愁漂う古民家やお堂の横をすり抜け、やがて近代的な建物の立ち並ぶ工業地帯へと至り、そして、ここを通り過ぎると長閑な田園地帯が広がる。
本流の各釣り場を廻っていると概ねこうした風景が展開されて行くのは何処も同じ。先日も既に通い慣れた地方都市を結ぶ主要道路を北上し、緑地に包まれた流れに再び降り立つと、これまでとは違い釣り人を多く見掛けたのは皆、最盛期の訪れを良く知っていたらしい。
当日、ここへ到着したのが午前11時前。深みのある場所は何時の間にか来たルアー釣りに押さえられた事を機に、今回は下流に位置する深瀬の岸際をシングルハンド・ロッドで手返し早く釣り下る事にしたのは以前より一度は試したいと思っていた方法でもあり、長いダブルハンド・ロッドではキャストの空間上、どうしても立ち込み過ぎの傾向に加え、キャストでもつい遠投している事が多く、ふと気付くと手前の怪しい流れを踏み潰しているのではないかと感じる時があるものの、これでは本来の目的から逸脱した釣りにもなってしまうと敬遠していたものだったが、いざ実践すると果たしてどんな結果が出るのかと言った興味も尽きず昼迄の一時間程を試験的に過ごすと決断していた。
こんな絶好の流れ、水温は13℃、もし、ここが遥か上流ならば必ず山女魚が着き、未熟者でも最低限何らかの反応位はあると確信して結び付けた10番と12番のフライを付けたドロッパー仕掛けだったが、これにも全く反応が無かった事によって幻想からは相反する現実へと立ち返り、やはり魚が少ないと感じたのは、恐らく北海道や東北の河川にも引けを取らない程、この辺り、川の相としては素晴らしい事から安易にこんな期待を抱いても所詮は関東の平野部を流れる一つの河川に過ぎなかったと痛感させられた。
しかし、シングルハンド・ロッドでのキャストは飛距離を気にしなければ軽快にして実に快適、インターミディトにタイプⅠのヘッドは案外と下流からの風にも強く、次の機会には右岸から左のキャストで挑戦したいと思っていた。