今から凡そ一年半から2年程前だっただろうか、右岸に突如出現した広い砂浜は昨年後半辺りから手前側の砂を流す分流が浸食して中州状となってしまい、 ここ2~3ヶ月余り、この右岸に立ち入ってはいないものの、手前側の分流は雪代の流入等もあって益々砂を浸食し、その幅や深さも増している可能性が高い上、当然、寒い2月より水位自体も上昇している。
そうなれば、当然この分流にも魚が入り込んで来る可能性は大いにあると釣人ならずとも容易に想像するのではあろうものの、得てして遡上魚狙いの大物師に限っては、過去の実績等による固定観念からなのか、どうしてもこの怪しげな分流はさっさと渡り越えるばかりで、奥にある本流筋の大場所に狙いを絞ってしまうのは良く見られがちな傾向ながら、こうした最大幅が20mにも満たない限られた小規模な流れは飛距離面で不利となる餌釣り師にとっては格好の狙い所ではないのかとも思っていたのだが、対岸から眺めている限り、急増する餌釣り師ですらも相変わらず闇雲に奥へ奥へと突進む事ばかりに固執している様にも見えていた。
そして先日、毎度の事ながら左岸より、人気の集中する対岸の様子をも遠くから伺っていると胸近くまで立ち込んでいた二人の餌釣り師の背後で一応のウェーダーは装備していても水には全く浸からず楽々とルアーを投げ続けていた一人の人物が突如大きな魚を掛けたのだが、その暴れ振り、そして何より本人の慌てふためく素振りから直ぐに例の魚である事が解かった。
ここで釣り上げた御本人当時の言動を勝手に面白可笑しく推測すると以下の様になった。(笑)
御本人 : 「 ここかぁ~、サ○ラが釣れると言う噂の場所は・・・・。」
「 それにしても皆、超~奥までウェーディングしてンじャ~ン、よぉ~し、オレも・・・。」
「 ??って・・・マジっすか!、超~深いじゃ~ン、あんな所まで一体どうやって入ったンだぁ~??。 」
「 う~ん、解かンねぇ~、取り敢えず・・・、こっから投げて見~よおぉっと・・・・。」
「 パシュ!、ポチャン!、カリ、カリ、カリ・・・・、 ゴゴンッ、んン?!。」
「 おぉ、何か釣れたぞ!、やったぁ~!!、カリ、カリ、カリ・・・、 」
「 バッシャ~ン!、 おぉ~?!、サ○ラだ~、マジ釣れちゃったンすけどぉ~、超~ラッキ~~!!。」
と、こんな若者風だったかどうかは定かではないが、特筆すべきは、この後、右岸に居た釣り人全ての行動にある。
先の時刻、凡そ午前11時30分頃。この後、お昼を挟むとこの噂は直ぐに右岸中の釣り人間に広まったらしく、午後からはウェーディングする者は一切なくなり、誰しもが手前側を狙い始めたのは十分理解出来る。(笑)
釣り人の多くは経験を重ねるにつれ我が強くなり、固定観念にも囚われるが、そんな頑固者ですらも、あまりにも釣れない魚を相手にしていると数少ない成功事例に対しては即座に白旗を上げ、釣れた人そのままの行動をあっさり真似してしまうのは皆同じであっても、ある意味これらは人間らしいとも思える。
それにしても対岸から見た限り、その後は如何なる魚すらも釣れた形跡は見られず、今回唯一、本命の魚を手にした釣り人はお見事であり、殆ど釣り人達が見落として荒らしてしまう手前側の深みに目を付けた成果で、場合によっては 「 アイツ、あんな所を狙っているよ~、釣れる訳ないよな~。」 等と思いながら見物していた人もいたのではないかと思われるも、当人は一体どう言った根拠があったのか、何れにせよ 「 皆と同じ事はやらない。」 と言った他とは違った観点を持ち、これを実行した勇気、信念とも捉えられる行動が齎したと言える。(笑)
こうして、人気の右岸も暫くは釣り人が分散し、空く場所も多く現れる可能性もあり、再び行く気が沸いていた。