その昔、一度大雨に見舞われると途轍もない暴れ川へと変貌し、流域に住む農民達に多大な被害を齎したが、先人達はそんな苦悩を乗り越えて何里にも渡る擁壁や幾多の水路網を整備させると豊富な水を巧みに利用し、嘗ての暴れ川と上手に共存し現在の川の姿となっている。
こうして出来た広大な河川敷。幾多の蛇行を繰り返し、彼方此方に深い落ち込みや大淵を形成していたが、頑丈な擁壁に守られた流域は次第に真っ直ぐな浅い川へと変わりつつある。
それでも、やはり川はいい。
それも膨大な流れを持つ本流の中流域がいい。
とは言え、ただ広大なだけでは何か物足りない。
そう、水辺が泥や砂に覆われていては真の中流域とは言えない。
やはり水辺には綺麗な河原が必要不可欠。
そして、そこに敷き詰められた石は出来るだけ大きい方が川本来の生態系を保っている。
そんな流れに深く立ち込んでいると自然との一体感を味わえる。
そんな流れに身を任せ14ftをフルキャスト。聞こえる音は水音と雲雀の囀りだけ。
そんな流れ、如何にも釣れそうな雰囲気が漂っているが、まだ早いこの季節、勿論何の反応もない。
魚が釣れるのに超した事は無いが、別に釣れなくともこんな一時は充実した気分になれる。
だがしかし、釣り始めて一時間ほどだっただろうか、上流から怪しげな風が吹いて来ると見る見る内に強風へと変わり思う様なキャストは不可能となった。
相変らずこの本流の気象条件は厳しいものがあり、右岸左岸を考えるとやはり左右からキャストする必要性を強く感じる。
そしてもう一つ、その日その日に何が何んでも魚が釣りたいのならこの釣りはやらない方がいい。