冬型の気圧配置が齎す季節風であっても、その時によって風向きが若干異なる時がある。あの日の風はやや北向きである土手の方向から吹いていたので、河原の最下流部にある流れの湾曲した土手直下の地点に潜り込んだ。それでも風は川沿いにも回り込んでしまうのでどれ程の違いがあるのかは解らない。使用するロッドもKⅡの16ftで練習がしたかったが、ラインをガイドまで通しつつも崖が迫っている。更にもう一本、いつもの14ftを取り出し、これから開始した。
課題である左からの 反転式 を繰り返す。リフトしたラインが強風に煽られ、先端がバタバタと大きく暴れ回り思うように操作する事が出来ないが、一旦水面へ上手く着水させる事に成功すれば何とかシュート出来る。後日この時間帯の風速はどの位あったのどろうかと気象庁の観測データを見ると風速6mと記録されていたが、この辺りの優位点もこういったキャストならではと言った所だ。
このキャストも徐々に改善されているのか、それとも追風に乗っているだけか、良く飛んで行く。また、何といってもとんでもない失敗も減っているが、今から考えると強風によってランニングラインのリリースを1m程短くしていた効果もあったのかも知れない。
要するに追風が強い日での練習は、こういった事があるのでキャストの成功と失敗が何であったのか、飛行したラインの形状等を良く注意していないと見極めるのが難しくなったりするので、出来れば避けたいところだ。
しかしながら、もっと気の毒なのは遅れてやって来た
友人 だ。現在の彼はシングルハンドロッドからの完璧なオーバーヘッドキャストの習得を目指しているのだが、使っているラインはフローティングでしかもフルライン。これでは達人級の技術を持つ人でもお手上げとなる風で普通ならばそそくさと諦めて帰る状況なのだが、何と勇ましい事に練習を続けていた。
良く、「 諦めが肝心 」 等とは言うが、事これらの技術の習得に関しては、「 諦めない 」 事が肝心となるのは誰もが認める事だろう。だが、この時彼は一体どんな心境だったのだろうか。
そして、風はその後の勢力を更に強め始めた。