「飛 翠。」 このキャストが誕生した時よりずっと思い描いていた一つの憧れがあった。それはもっと遠くへと飛ばすという単純な事。
では何処まで飛ばせばいいのか、それはずばり40ヤード。
たかが40ヤード、36m。オーバーヘッドや昨今のスペイキャストでこの飛距離は今更自慢にもならない飛距離だろうが、10mという極端に短いシューティングヘッドで元々キャスティング技術の無い自分にとっては目標となっている。
昨日の修行、いつもの練習場は絶好の天気で風も穏やか。そしてこの辺りでは珍しく上空ではトビが鳴きながら高く舞っていた。川の水位も2~3日前の雨で迫力溢れる流れをしている。
先ずは14ftでこの所の課題通り、左腕を上にしての反転式からとなった。先週よりも大分良くなっていた。
次に12.6ft。これを振るのは久し振りだった。この位のロッドになると実に軽量で心地良く、本編更新用の映像も撮影した。
そして最後に16ft。真っ青だった青空は灰色の鱗雲に覆われて怪しげな雰囲気を醸しだしている。
先週これを取り出す事はなかったので、たったの2週間ぶりなのだが、始めの内はどうしても上手く扱う事が出来ない。もう少し柔らかいロッドを購入した方が近道かも知れないのだろうかという思いが未だに捨てきれない。
何度もキャストを繰り返しながら、ラインを落とす位置が遠すぎる。前動作のラインはもっと前だ。ロッドの振りが大き過ぎる。Dループへ移行する時はもっと逆へ字を描いたほうがいい等と修正を繰り返して漸く、やっと良くなって来た。
その内に、これはいけるかも知れない。といった予感がして来た。
温存してあった新品のランニングラインを巻いたリールにスカンジナビアンSTヘッドを取り付けた。
ギィーギィーとリールが逆転音奏でながらランニングラインを引き出して行く。はやはり新品いい。すべすべというのか、つやつやとして摩擦抵抗が少なそうで、更にコシもあって糸絡みも無さそうで如何にも飛びそうだ。
予め目印を取り付けた部分までのランニングラインは27mあるので、10mのスカンジナビアンSTヘッドと合わせてここまできっちりと延ばす事が出来れば目標突破となる。
そして16f一閃。何度も何度も試みたが、引き出した全てのランニングラインがぴたりと綺麗に張る事はなかった。
しかしながらその残りは凡そ1~2m、あと少しだ。