久しぶりに全くの無風状態をも満喫していた。そして風が無いとこんなにも投げ易いのかと改めて感心してしまう。当然、飛距離も延びる。ついつい投げ過ぎて、けたたましく流れる白泡の流芯にシューティングヘッドを打ち込みリールが逆回転を起こしている。
この場所の魚も先週の岸際から明らかに流芯よりに着いて居て、シュートしてから早い内に掛かってくれるので釣っていて実に楽しいのだが、釣り針のカエシを潰した結果か、それとも魚が小さ過ぎるのか、針が外れる事が頻発する様になった。アタリも多かったが、この後、25cm程の虹鱒1尾を加えると21~22cm程と更に小型の山女魚4尾を釣ってこの場所を流し終えた。
だが幾ら小さいとは言え、近年稀に見る釣れ具合だ。解禁から3ヶ月以上も経過しているのにも係わらず一つの区間でこれだけの魚が溜まっていた場所は今迄にお目にかかった事は無い。これはやはり、ずっと高水位が続いて釣り人や川鵜等の野鳥に捕られる事なく、魚が残っていたのだろうと思う。それとこの場所、些か厄介な場所に位置する為か、やはり釣り人があまり立ち入っては居ないらしい。
以前にも別の川で沢山釣れた時はあったのだが、魚は更に小さい。時に10数cm程度の山女魚だったりしたが今回は小さくても20cm位はあったし、この大きさの割には引きが強かった。この上にもっと大型の魚が釣りたかった等と考えるのは贅沢なのかも知れないのだが、お目当ては数釣りでは無い。
やはり、大型の山女魚が釣りたい。
4輪駆動車でなければ辿り着けない悪路を抜けると、対岸には鬱蒼とした緑が生い茂り、オオルリの囀るせせらぎの世界に到着した。直ぐ近くの国道は大型のトレーラーが闊歩している事を思うと正に別天地だ。
この場所、対岸に農業の取水口がある為、人工的に川を掘り返されて深くなっている。言わば人造深瀬。誰もが一目見て大物が居ると感じ取れる絶好の場所。当然釣り人も多いが、こちら側の右岸にはそこから掘り出された石が盛られている為にほぼルアー釣りの独壇場。スペイキャストが少し出来る様になってやや釣りらしくはなったものの、ショートベリーと呼ばれるスペイラインでさえ直ぐに背後を引っ掛けてしまう非常に厄介な場所でもある、この為か、毎回ここでも釣りをするのだが釣れたのは一度位の記憶しかないが、ここも今回、初めて 飛翠 で存分に探る事が可能になった場所の一つだ。
期待を込めて上から探って行く、直ぐにも釣れそうな雰囲気が漂っているが、こういった誰もが狙いを定める場所は得てして釣れない、対岸に居た地元風の餌釣り師も引き上げていった。
だが暫くすると反応があった 「 コン、コン。」 針掛かりしない。また少し下ると 「 カンッ。」 今度は掛かったがやはり小さい。 ランニングラインを手繰り寄せている間に針が外れてしまう。更に下る。「 スコンッ。」 また来た、がこれも小さい。22cm程の山女魚だがこの場所でも釣れた事に少々の満足感があった。
その後、更に釣り下って行くと一度反応があった程度で釣れなくなってしまった。この場所の全てを探る前に見切りをつけた。やはり駄目か、先程釣れ具合からするとひょっとしてと思ったのだが、ドライフライの時代からこういった目立つ大場所はあまりいい思いをした例が余り無かったが、これからはこれがある、何かが起こるかも知れない。
さて昼食を摂ったら対岸に渡るとするか。
つづく。