圧倒される流れ。
午後からはまたもや16ftの登場。他の釣り人も諦めたのかこちら側は我々だけになり、一級ポイントに立ち込む人影は無い、いよいよ左岸の重要部に入る。
下流側からの風が吹いているので、右腕を上にしてキャストを始めるのだが、このキャストと共に歩んだ14ftにすっかりと慣れてしまったせいなのか、またしても全く投げられなくなっている。これは参った。毎回同じ事の繰り返しだ。原因を自己分析しながら修正が完了してから暫くして、やっとある事に気が付いた。実は11mにしたつもりが、真ん中のインターミディエイト部が抜けて9mになっていたのだ。
お粗末な話である。本来ならば、もっと早く気付くのだろうが、元の14ftにすっかり馴染んでいたのが原因だと勝手に思いこんでいたらしい。やはり、何か変だと感じたならば、あらゆる事を疑って見るのを忘れてはいけない。
しかし、このロッドで9mのSTヘッドでもやる気になれば、投げられる事に感心していた。むしろ、力の劣る左腕を上にした時はこの方が投げやすい気もしていた。先週、11mという長さに確定したのに早くも疑心が湧いて来てしまった。
が、こんな事に何時までも係わってはいられない。もうキャスティングの事は後にして、釣りする事に集中しなくてはいけないと自身に言い聞かせ、車まで戻るのも止め、そのまま9mでシュートする。
“ ゴリッゴリッ ” といった感触がラインから伝わってくる。速い流れから少し下り、タイプ6のシンクティップが根掛かる訳でも無く小砂利質の底を引きずっている。時々、ロッドを煽って縦誘いを加えてみたり、リトリーブで底引きしたりするも相変わらず生命反応は皆無。ついでに先日巻いたミミズのチューブフライに交換しても勿論同じであった。ふと空を見上げると翼の尖がった白い鳥が沢山舞っている、そう
コアジサシだった。彼ら夏鳥が渡って来ていたのだ。つい1ヶ月程前の寒さが嘘のように季節の移ろいを実感していた。
ひと流し終えると時計は午後3時を回っていた。早朝から来ている自転車氏、さすがにお疲れ気味である。そこで彼を気晴らしついでに僕がマルタウグイを釣り上げた地点に案内する事にした。彼もそんな魚は既に何匹も釣り上げていただろうが、中洲によって分流し複雑化しているその地点をルアーでも試して貰いたかった。ここに入る人は何故かあまり居ないので本来は内緒なのだが友人となれば話は別、自分には達成できない事を彼に託す事にした。
御免なさい、またやってしまいました。
その場に到着し、再度マルタウグイに遊んで貰った後、核心部にルアーを投入して貰う。一投、二投と繰り返すがやはり何も無い。テトラポッドが沈んでいるので根掛かりが多いが彼は巧みにロッド、ラインを弾く様に彼はそれを外しながら続けるのだが腹部の腫れ上がったマルタが釣れるのみだった。
夕方になると接近してきた低気圧のせいか、風下というより対岸から6~7mの風が吹いて砂埃を巻き上げている。
天候の変わり目を呼ぶ雲だった。
そこで久しぶりに対岸の右岸に渡ることにした。到着すると釣り人は一人しか居なかったのだが、その人こそ僕のもう一人の友人H氏だった。丁度、彼も止めようとしていたらしく、この時点で僕の釣りは終わっていた。何せ一年振りの再会なので2時間程の談笑になっていた。
しかし、彼はここでの情報通でもあるので色々と聴取出来た。なかでもまだ今シーズンは毎日通っている人ですら、誰一人として本命を釣り上げて居ないらしいという事が分った。
これは、まだこれからという事なのであろうが、毎年考えさせられるのは一体いつまでここでの釣りを続けるのかだった。