増水した本流を遡っていたのは先日の昼前、やがて気になる地域へと差し掛かる。
この辺りからは何処か山間部への始まりと言った雰囲気があり、上空を飛び交うツバメは関東の平野部では滅多に見られないイワツバメと変わり、本流にも 河川敷 と呼べる場所は殆ど無く、まるで 峡谷 か 水路 と言った印象の川辺が延々と数キロにも渡って続くのも極めて稀な地域だとも思える。
更に頻繁に見られる川に沿った道路も無く、土手と言うよりは 防水堤 の様な細い擁壁上は自転車専用道路となってしまい余所者の侵入を堅く閉し、この一方の切り立った崖側の直ぐ上には新興住宅地が立ち並んではいても、傾斜の緩い側には古い民家もあり懐かしい佇まいを今尚残すと言う時代感の隔たりも激しい。
この為、右岸左岸何れにしても川への進入経路どころか近づく事さえ儘ならず、橋から望む谷間を蛇行した流れに点在する狭き河原は、まるで “ 桃源郷 ” の如く目に映ったのは昨年6月に初めてここを訪れた時と全く同じだった。
しか~し、現代には “ グーグル・アース ” があった!。(笑)
以前では下調べが足らずに河原に辿り着く事は不可能に終わっていたが、今回は予定外の行動ながらも日頃、遥か大空より進入ルートの目星を付けていた為、こうした記憶を頼りに古民家の軒先から狭い路地を通り、「 ジリリッ、ジリリッ。」 とエナガの鳴く鬱蒼とした木立の中をすり抜けると、視界は突然パッと開け目の前には人っ子一人見られない “ プライベート・ビート ” がここにあった。
河原一面に広がった石も予想以上に大きく人間の頭程の大きさの石もゴロゴロしている。また、重機の踏み跡から河川改修等の後だったのだろうか足下の起伏も激しく急激なカケアガリを形成し一歩踏み込むとガクンと落ち込んでいる事も侭あり釣り下る足取りも慎重になる。
更に流芯となる対岸は深く護岸を守るテトラポッドが並び大物が潜む条件を全て兼ね備え今にも衝撃的な振動がロッドから伝わって来る様な錯覚すら覚えると、こんな悪い状況でありながらもワクワク、ドキドキ、そして、ヒヤヒヤしながら集中した釣りが出来たのだが、こうした感覚は一体何年振りの事だっただろうか。